寡黙な死骸 みだらな弔い 小川洋子
     中公文庫 2003.03

     収録作>>
     洋菓子屋の午後/果汁/老婆J/眠りの精/白衣/
     心臓の仮縫い/拷問博物館へようこそ/ギブスを売る人/
     ベンガル虎の臨終/トマトと満月/毒草

     review>>
     息子を亡くした女が洋菓子屋を訪れ、鞄職人は心臓を採寸する。
     内科医の白衣から秘密がこぼれ落ち、拷問博物館でベンガル虎が息絶える―。
     時計塔のある街にちりばめられた、密やかで残酷な弔いの儀式。
     清冽な迷宮を紡ぎ出す、連作短篇集。

       in my opinion>>
       単なる事故から殺人まで、
       その死因は様々だったけれどとにかくやたらに人が死んだ。
       たとえば貴方が死んでしまったとしても、
       それでも私の生活は変わらずに続いていくだろう。
      そのほうが楽になれるのかもしれないといまなら思える。
       いちばん哀しいのは、
       同じ空の下で生きているのにもう二度と会えないことだと思うから。

       人は死に方を選べない。
       もちろんそれは基本的に、だけれど。
       登場人物たちは皆、訪れる死をそのままに受け入れる。
       あるいはそれが訪れたことにも気がつかない。

       貴方が死んでも私が死んでも、
       世界はなにひとつ変わらないのだと思い知らされた。
       残された人々の手によって死は弔われ、
       やがてはそれも日常のなかに埋没してしまう。
       現実はなにもかもを呑み込んで流れていく。

       しかしここでは、
       死だけが取り残されているような気がした。
       取り残されたそれぞれが思わぬところで繋がり、
       まるで無限ループのようにまた不思議な余韻を残す。

       いま、突然に私が死んだら誰が泣いてくれるだろう。
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